私の職場での日々は、最近、大きな変化を遂げました。この変化は、「人を動かす」を読み始めてから徐々に起こり始めたものです。
この本は、人とどう関わるべきか、どのように自分自身を改善し、周りの人々との関係を深めていくかについての洞察を与えてくれました。
特に心に残っているのは、毎朝出勤する青果部門のおばあちゃんの姿です。
彼女は、私が職場に中途入社した時から、いつも元気で明るく挨拶を交わしてくれました。しかし、年齢と共に彼女の体は徐々に衰え、階段を上るのが困難になっていきました。
息をフウフウ言いながら手すりを使い、ヨイショヨイショと階段を上り、3階の更衣室で着替えてまた降りて1階の作業場で仕事を始められます。
以前の私なら挨拶をするだけで特に何も感じなかったと思います。
しかし私はおばあちゃんのこの姿を見て
「こんなに大変な思いをして頑張って働いてくれてる。なんて有難いんだ」とひどく感謝した事を覚えてます。
この変化の一端として、ある日の朝礼での出来事があります。
店長が売上や働く姿勢について厳しい言葉を投げかけた時がありました。
「こんな売上では全然ダメですよ!もっとしっかり働いてください!!」
その時、おばあちゃんは目を閉じながらじっとその話を聞いていました。
その姿を見て私は店長に「こんなに頑張ってくれている人になんてことを言いやがる!!」と一瞬にして腹が立った事を覚えてます。
しかし、その瞬間ふと出てきた感情がありました。
「私も同じことをしている」
私は、自分自身も同じように、パートの方々に対して無神経な言葉を投げかけていたことに気づきました。
売り上げが下がっていることや値引きが多いことを理由に、
「売上が落ちてほとんど半額値引きになってるんだからもっと作る量を減らせ」
「こんなもん売れないんだからあんまり作るな」
「余計な商品を発注するな。廃棄になったら利益が下がるだろ」
とパートのおばちゃん達に対して無神経な言葉や行動をしていました
例えばお寿司の値引きが激しくて何度も作る量を減らすように売上を見せたり、何だったら半額で残った商品を写メして作業場に置いておいたり、いかに減らす事が大事かを伝えようとしました。
しかしパートさん側の気持ちを考えてみました。
最初は寿司部門はなかったそうです。
十数年前にお寿司をはじめた時、当時は大盛況だったみたいです。その時のお客さんに「ここのお寿司とっても美味しい!毎日買いにくるわ」「近くでこんな美味しい巻き寿司が食べられるの嬉しい!」や社員さんからも「目一杯作ってたくさん売りましょう!」「お客様をいっぱい喜ばせましょう!」そんな風に作られていたはずです。
当然商売ですから、そんな状態が何十年も続く事は難しいです。だんだんと売上が下がってきている事は分かっておられたはずです。
ですが人は感情で動きます。
売上が下がってきたから作るのを減らせ、というのは彼女達からしたら自分の存在が否定されたと同義です。
確かにお店として利益を出さねばなりません。
そのために値引きをコントロールや商品の廃棄を減らすのも大事ですが、私は何かパートさん達を感情のないロボットとして扱っていたも同然でした。
彼女らもまた、お客様に喜んでもらえるよう一生懸命に働いていたのです。
もっと他に言い方があったはずです、理解してやってもらうやり方があったはずです。
この経験から学んだことは、人との関わり方において、理解と尊重がいかに大切かということです。
それは、単に業務の効率や成果だけを追求するのではなく、働く人々の心に寄り添い、その努力を認め、支えることに他なりません。私は、「人を動かす」を通じて、自分の行動や言葉が他人に与える影響を深く考えるようになりました。
そして、職場のみならず、日常生活においても、人々との関わりをより良いものにしていくためには、相手の立場を理解し、尊重することが欠かせないと実感しています。
この変化は、私の職場だけでなく、私生活にも良い影響をもたらしています。人との関係を築く上で、相手の価値観や立場を理解すること、相手の努力や成果を認めることが、より強い信頼関係を構築する上での鍵となることを学びました。
私はこれからも、人々との関わりの中で学んだ教訓を生かし、互いに尊重し合い、支え合う関係を築いていきたいと思います。